【バレーW杯】埋まらぬ竹下、佐野の穴 大竹ら若手の成長は収穫 リオ切符持ち越しの日本
古賀 紗理奈 スケッチ

2位以内でのリオ五輪出場権獲得を狙ったW杯で、日本は7勝4敗の5位に終わった。真鍋監督は「ブロックで止められる本数を減らさないと強豪に勝てない。一番の課題」と敗因を分析した。

 敗れた試合で相手に与えたブロック得点はロシア戦が14、セルビア戦が21、米国戦が16。中国戦では11だったものの、身長の低い日本がライバルの高さを克服できなかった姿が浮かび上がる。

 銅メダルに輝いた2012年ロンドン五輪までは、バックアタックなどを活用し、敵の高いブロックをかいくぐるトスを上げ続ける名セッター、竹下佳江がいた。

 第2戦まで先発した32歳の古藤は長い試合になるとトスが乱れた。レシーブ力を買われて第3戦から先発した21歳の宮下も、米国戦で長岡にトスが集中するなど課題を残した。指揮官は「サーブで崩されれば、どちらが入っても厳しい」とかばうが、絶対的な司令塔の育成は大きなテーマだ。

 佐野優子が引退したリベロも事情は同じだ。今大会はサーブレシーブを座安、スパイクレシーブを佐藤が担当。欧州チャンピオンズリーグでベストリベロ賞の受賞経験もある前任者の水準には届かなかった印象だ。

 収穫は19歳の古賀ら若手の台頭。ロンドン五輪以降、人材不足が指摘されていたセンターでは、全試合に先発した21歳の大竹が柱に成長した。
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2015/09/08

情報分析を基に戦術構築 アメフット化進むバレーボール界

 バレーボールの女子ワールドカップ(W杯)で日本は5位に終わり、リオデジャネイロ五輪の出場権獲得は来年5月に始まる世界最終予選に持ち越されることになった。

 日本が敗れた相手、中国、セルビア、アメリカ、ロシアが1位から4位に並び、現状の実力を反映する形になった。

 それでも日本は19歳のウィングスパイカー古賀紗理奈、大会期間中に21歳の誕生日を迎えたセッター宮下遥など、若手の起用も多く、最終予選そして五輪までに「のびしろ」があり、ロンドン五輪に続いてのメダル獲得は到達可能なゴールだ。

 昨今のバレーボールを見て感じるのは、スタッフの「アメリカンフットボール化」である。コーチ、アナリストの分業化が急激に進んだのだ。

 全日本女子のスタッフを見ると、眞鍋政義監督を筆頭に、コーチ陣には(1)ブレイク総括(2)サーブ(3)ブロック(4)オフェンス(5)ディフェンスと5人のコーチがそれぞれの専門分野を担当している。

 対戦相手を分析し、試合前に対策を考え、練習の計画を練るのだ。

 オフェンス、ディフェンスそれぞれにコーチがいるあたり、アメリカンフットボールからヒントを得ていると思う。監督は情報を集積し、全体をコーディネートして戦略を決定する立場にある。

 コーチ陣に情報を提供するアナリストも3人いる。

 バレーボールは「傾向」がはっきりと表れる競技であり、現代は情報分析、それに基づいた対策が重要なことが分かる。

 ロンドン五輪で銅メダルを獲得した背景には、3位決定戦で「対戦相手の韓国に強いのは誰か?」という視点から過去の膨大なデータをもとに選手を選び(今回のW杯メンバーである迫田さおりが先発に抜擢された)それが功を奏した。

 日本が「バレー強国」として復権してきたのは、選手の能力もさることながら、こうした情報分野でのアドバンテージが大きかった。

将来的には、さまざまなスポーツでスタッフ、コーチ陣の分業化が進んでいくのは間違いない。競技経験がなくとも、分析に優れていればスタッフとして採用されるのも珍しくないだろう。

 おそらく、2020年の東京五輪の頃にはそうした傾向が一層顕著になり、コーチたちには情報分析を基にした、クリエイティブな戦術構築が求められるようになるだろう。



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